Rikei Girls' Collection 2017 -talk report-



2017年2月5日に開催されたRikei Girls’ Collectionにて行われた講演会の内容を紹介します。
ご協力いただいたのは数学オリンピックの日本人女性初の金メダリストで、現在はジャズピアニスト、数学者、教育家として活動されている中島さち子さんです。
(司会:渡邊紗希)




中島さち子さんのプロフィール等はこちら(http://sachikomusic.web.fc2.com/)をご覧ください。

-ピアノを始めたのはいつからですか?
-4歳からです。気の赴くままに即興的に演奏することや作曲が好きでした。
が、正直練習はあまり好きではなかったかも…。
ただ、中学2年生の時に少し作曲がマンネリ化してきたこともあり1度ピアノをすっぱりやめて、数学に没頭するようになりました。
大学生になってから、本当に久しぶりにまたピアノを始めました。

  -算数や数学に興味を持ったのはいつ頃ですか?
-中学1年生の時の数学の先生が、よく「数学は美しい」と仰っており、その頃から「数学は美しい世界を見ているんだな」と興味を持っていました。
何か一つの物事をずっと考えているのが好きな性格だったこともあって、数学は好きでした。
特にピアノをやめてからは、急激に数学の面白さにのめりこんでいきました。

  -中島さんの学生時代について教えてください。また、当時興味をもって取り組んでいたことは何ですか?
-本を読むのが好きだったこともあり、周りからは文系だと思われていました。英語も大好きでビジネス英語などを勉強していたのですが、これは後々海外に出たときには役立ちました。ただ、実際に海外でコミュニケーションする際には、沢山のイディオムを知っていることよりも、多様な事柄に対して自分の意見を持つことと相手の意見をきちんと聞けることが大切と感じました。
数学は、興味を持ち始めてからはどんどん雑誌の問題に挑戦したり、学校の図書館にある現代数学の本で読めそうなものにトライしたりしました。数学は本当に魅力的な世界ですし、あらゆる世界の背後に潜む学問ですから、試験勉強だけのために学ぶのは勿体ないです。数学に限らず、面白いと思ったらカリキュラムに縛られずどんどん先へ進み、深堀りしてほしいと思います。
大学では数学の勉強を続けながらも、ジャズサークルに入ったことをきっかけに、「表現」の道にのめり込んでいきました。初心者でも仲間と楽しめるのがセッションの醍醐味です。昼は数学、夜はジャズというのが当時の生活でした。

  -数学オリンピックに出場したきっかけや出場したことによって変わったことはありますか?
-『大学への数学』の宿題コーナーという難問に挑戦したところ、出題者である数学者ピーター・フランクルさんから突然電話がかかってきました。宿題コーナーやフランクルさん、あるいは色々な数学のセミナーを通じて同世代の数学仲間に出会いはじめ、ついに高校2年生の時に数学オリンピック国内予選・本選を通り、国際インド大会の選手に選ばれました。数学オリンピックでは、世界中の素晴らしい数学仲間に出会え、ワクワクしました。変わったことは、多くの知らない国の方との出会いを通じて、見える世界が広がったことです。自分の中で革命が起こったような感覚でした!海外体験の意義は大きいと思います。

  -数学の道に進むか、音楽の道に進むか、どのように決めましたか?
-数学者になるか音楽家になるかで考えていましたが、当時からこれらはとても似ていると思っていました。結局、遅いスタートであったこともあり、音楽に魅惑され、音楽に夢中になる日々を長らく過ごした後、数学研究にも戻りました。

  -数学と音楽で似ていると思う点を教えてください。
-どちらもクリエイティブな点が似ていると思います。そして、課題に対する突破口を見つけるまでの創造プロセスもとても似ていると思います。

  -理系の進路の魅力は何だと思いますか。
-数学は特にアメリカでは非常に職が多く、現在は、日常や社会においても数学の力でイノベーションを起こせるチャンスが増えています。ただし、理系女子がまだ余りに少ないのが現状です。皆さんが、女子ならではのコミュニケーション能力の高さや想像力を武器に、女性のロールモデルとして世界に積極的に発信していってほしいと願います。

-今後の目標について教えてください。
-2つあります。1つ目は、とにかく自身の音楽と数学のブラッシュアップです。3月には新しいアルバム『希望の花』を出し、4月9日にレコ発ライブをします。音楽以外の芸術とのコラボレーションも色々と企画しています。2つ目は、教育・人材育成です。STEM(=Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育にアートを加えたSTEAM教育を開発したいです。また、ICTを活用した、21世紀型のグローバル人材育成デザインの可能性をもっと模索したいです。

-最後に、会場の学生にメッセージをお願いします。
-自分たちが社会をリードするつもりで、世界を見て、世界に対して発信できるようになってほしいです。そのために、とにかく挑戦することと学ぶこと、試行錯誤を繰り返す研究は大切です。面白いことはとことん突き詰め、自分らしい生き方を創造していってください。

♪講演会では、来場者から集めた5つの音とサイエンスというテーマをもとに、即興演奏をしていただきました!また、東日本大震災後に作曲された『希望の花』も演奏していただきました。



中島さち子さん、素敵なお話と演奏をしていただき、ありがとうございました。