澤谷由里子さん

日本の立場で研究を考える 澤谷由里子さん(2013/02/12)

経歴

東京工業大学理学部情報学科卒業
同大学院総合理工学研究科 システム科学専攻修了
東京大学大学院 総合文化研究科広域システム科学系 博士取得
日本IBM入社 研究開発統括戦略、東京基礎研究所等担当
(独)科学技術振興機構(JST)フェロー

メインインタビュー

―理系、その中でも情報科学を選択されたのはなぜですか。
―小学生の時から、数学が好きでした。休日は父が数学の問題を出してくれて、それを説くのが楽しみでした。高校は理数科に進み、大学も理系大学に進みました。女性が家でも働けるということで、コンピュータ関連の学科を選択しました。でも、赤本を見たときは少し悩みました。赤本によると、全学年の女性の人数が、0~7名だったので。
(―全学年で7名は少ないですね。)
でも、入学してみると、同期は20名で安心しました。

―小・中・高校生時代はどんな毎日を過ごしていましたか。
―男勝りで活発な子でした。小学生の時は長年かけて、泥の塊から石を作る実験をしていました。中学校は国立公園の中にあったので、自然に囲まれた学生生活を送っていました。隣の席の男の子と数学の出来さを競ったりもしていました。部活動は、中学では数学部、高校では合唱と科学部に入っていました。

―国立公園の中の学校とはユニークですね。大学時代のことも教えてください。
―学部では無限時数の数学を、修士では有限時数のオペレーションリサーチ(OR)を勉強していました。美術部でロックバンドを結成しました。研究室に入ってからは山登りにはまっていました。山登りのために、夜行列車で寝ながら移動していました。一番の楽しみは、山を下りた後の温泉でした。

―日本IBMでは、どんなお仕事をされていたのですか。
―最初は大型コンピュータの中を見てみたいという思いが叶い、大型システムのソフトウェア開発部門に配属されました。その後の移動で、ほかの開発部門、戦略部門、そして研究部門で仕事をしました。

―それぞれの部門は、どのように違うのですか。
―開発部門は部門全体で一つの目標に向かって突き進みます。戦略部門は未来を見通して様々な視点からどの研究を伸ばしていくか考えます。研究部門は、自ら領域を作って、将来につなげる研究をします。

―では、現在のJSTではどのようなお仕事をなさっているのですか。
―問題解決型のサービス科学のフェローをしています。企業にいるときとは違って、日本という国の立場で研究マネジメントをしています。サービス科学とは、様々な研究分野の融合によって、サービスシステムについて研究し、智識を想像する新しい研究領域です。現在14のプロジェクトが採択され研究開発が行われています。興味のある方は、http://www.ristex.jp/servicescience/project/をご覧ください。

―私の人生にはターニングポイントが5回ありました。
1.仕事と家庭、よくばりで行こう
大学生の時は、仕事と家庭のどちらかしか選べないと思っていました。しかし、大学の図書館員の方の「仕事と家庭、どちらか選ぶのではなくて、両立すればいいじゃない?」という言葉で目覚めさせられました。
2.自立って?イギリス生活というきっかけで、外から日本を考えたこと
病院では、必要な薬も退院も自分から言わなければいけませんでした。また、食事つきの下宿で、食事が出ないことに対して苦情を言うオランダ人にも考えさせられました。私は、食事のない日は自分で作って苦情を言っておらず、これが契約社会名なんだと実感しました。
3.企業内移動による多様な経験
それぞれの部門で様々な経験を積みました。研究部門は、自ら考え多様な人を巻き込み新しいことを生み出す。アメリカ研究所の戦略部門にいたときには、各研究所のディレクターが集まる会議で、全員が自分の視点で意見を言うのに刺激を受けました。
4.企業外への異動
企業の収益という観点から、日本の立場という新しい観点で研究を考えるようになりました。また、驚くほど人とのネットワークが広がりました。
5.博士号の取得
以前から挑戦しようと思っていた博士をとりました。考え方の基礎ができ、大学といった教育分野とかかわっていく道が開けました。

―これからの目標をお願いします。
―何もないところに考えの枠組みを構築できる人になりたいです。そして、そういう人達と議論ができる自分になりたいですね。やりたいことは、子供を含めた日本の将来のために、日本が人口5000万人程度の安定した国になるまでのロードマップを考え実施することです。そのためには、まず日本の知の生産機関である大学・教育の改善が必要ですし、必要な産業を起こすために、ベンチャーに関する知識が必要ですね。後、定年を迎えた70歳以降も、起業して生涯何かを続けたいですね。

―女子高生へのメッセージをお願いします。
―自分の可能性を制限しているのは自分です。枠をどんどん取り払っていきましょう。また、一人では難しいことも、周りの人に助けてもらうことで乗り越えていけます。一人で抱え込む前に、多様な方法を試しましょう。そのための重要なヒントを与えてくれるのは人、ネットワークです。出会った人とのネットワークは大事にしましょう。

澤谷さん、ありがとうございました。