内尾優子さん

博物館で働く理系女子 内尾優子さん (2012/12/11)

経歴

広島大学理学部地球惑星システム学科
東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻
修士課程,博士課程,博士(理学)取得
国立科学博物館職員
経営管理部研究推進・管理課研究活動広報担当専門職員

メインインタビュー

−内尾さんは,いつ頃から理系に進もうと考え始めたのですか。
−進路としては意識していませんでしたが,小学生の頃から理科は好きでした。
中学生の頃には,授業とは関係なくても身近な現象で不思議に思ったことを,先生に質問しに行くほど理科に興味を持っていました。

−進路として理系を選ぶ何か大きなきっかけはありましたか。
−難しいですが,中学生の頃には,漠然と何かを”研究”している人ってかっこいいし,すごい、という意識がありました。
当時は考古学の研究者になりたいと思っていました。
漫画で説明された理系の本も好きでよく読んでいました。

−なるほど。そしたら,高校学校の文理選択でも自然と理系を選んだのですか。
−そうです。高校生の時も進路を決めるとなった時には,その流れで自然と文系ではなく理系を選択しました。高校生になると,理科の中でも特に”宇宙”が好きになり,地球のシステムがうまく成り立っている仕組みを研究したい,と思うようになりました。
実は友達の中にも同じく宇宙に興味を持っている子がいました。近くに興味を共有できる友達がいてくれたことで,自分が進みたいと思う進路を貫けたのは良かったと思います。

−学生時代にはどのような研究をしていたのですか。
−大学4年生で卒業研究をするにあたって,高校生の頃から興味のあった生き物と環境と関係して地球がうまく回っている理由をコンピューターシュミレーションで説明したいと思っていました。
そのような話を先生にしたら,コンピューター趣味レーションではないけれど,私の興味に近い研究をしている先生を紹介してもらえることになりました。
大学4年生の時は,”日本国内で2〜3億年前の地球上で生物が大量に絶滅した環境変動があったということを化石と地層から説明する”ことが研究テーマでした。
大学院時代には”生物が大進化する前の6億年前の海洋の環境を岩石から解明する”という研究をしていました。
ロシアのアルタイ山地という場所で,毎年1ヶ月程度,キャンプをしながら,実際に地層を調べていたんですよ!

−自分の興味をとことん追求したのですね。
大学,大学院時代は研究漬けの毎日を過ごしていたのですか。
−もちろん,研究をしている時間は長かったのですが,忙しい中でも研究以外の活動にも時間を割いていました。
大学時代はエレキギターを習ったり,サークルで演奏したりして,大学院時代には着物の着付けを習って,資格も取りました。
違うジャンルの人と出会えるのは大事なことですし,気分転換にもなるので大切にしていました。

−大学院時代は博士課程を卒業した後もそのまま研究者として働きたいと考えていたのですか。
−博士課程の2年生頃に自分はこれからどういう立場で何をしていくのか考えたことがありました。
地球科学の研究者ではない道を考え始めた大きなきっかけは大学院生の時に小学生向けの実験企画を手伝ったことだと思います。

−小学生向けの企画ですか。
−はい。夏休みに大学で行われていた小学生に科学の面白さを伝える企画でした。子供達が簡単な実験でも楽しそうに喜んでいてくれるのを見て,科学が面白いということを伝えることに興味を抱き始めました。
そのうち,研究そのものも面白いけれど,研究についてわかる立場だからこそ面白さを伝えるための仕事ってないのか,とも考えるようになったんです。
−色々な話を聞いていくと,世の中には面白そうなことはたくさんあるんだなと改めて感じました。でも,研究となると全ての面白いことに携わることができない。そこで,色々な面白そうなことに関わりたいのかもしれない,と思い始めました。色々なことに触れられるって面白そうだな、と思ったんです。出版社に務めることや教師も考えたのですが,縁あって今の博物館に勤務することになりました。

−博物館は身近ですが,博物館での仕事ってイメージはあまり沸きません。どのようなことをしているのですか。
−博物館にはそれぞれの専門分野を研究する,研究者としての仕事もありますが,私が今していることは,一般の方に国立博物館の研究活動を分かりやすく伝えるという仕事です。
具体的には研究者の研究成果や,博物館の大切な資料について紹介するミニ展示を作ったり,ホームページの記事を分かりやすくしたりしています。
オープンラボ(研究室公開)などの企画を作ったこともありますよ。
2004年に地球館,2007年に日本館がリニューアルオープンした時には,広報担当としてガイドブックを作成するなどの仕事もしました。
担当の仕事とは別に女子中高生の理系進路選択支援として「ルーシーと私の楽しむカガクの時間2008,2009」というイベントを行ったり,最新研究の現場に同行取材してリポート内容をブログで伝えたりもしました。
思い出したらきりがないくらい色々な仕事をしています。

-仕事をしていて大変だと思ったことはありますか。
−色々な展示を紹介するには幅広い知識を身につけなくてはいけません。たくさんのことを最初から勉強するのは大変でした。
ですが,様々な人との繋がりは広がりましたし,色々な面白いことに触れたい!という自分のやりたかったことにぴったりだったのでやりがいはありました。展示や企画などを作る時には,色々な立場の人の意見を聞いてまとめることが必要で,それも大変でしたが。事がうまく進み,お客さんがたくさん入ったり,アンケートで高評価だったりするとやはりとても嬉しいです。

−理系として勉強してきたこれは良かったな,と思えることはありますか。
−習ったことをそのまま使えないとしても,理系として学ぶことで,論理的な考え方を学んだり,たくさんの仕事の中で優先順位をつけることができるようになったり,仕事をする上での基礎力が身についたので,良かったなと思います。
研究をする中では,たくさんの情報の中から大事なことを見抜く力や一度やると決めたことはやり抜くという根性と体力も習得できたと思います。
また,ロシアで研究活動をしていたので,文化が違う人とどのように意思疎通をはかるか,というコミュニケーション能力も間接的に学びました。

−最後に女子中高生の皆さんにメッセージをお願いします。
−中高生の頃,進路って悩みますよね。でも,悩むのは当然のことです。悩んだ時に,どういう分野に進みたいのかということももちろんですが,自分がやりたいことの究極は何か,ということを考えてみると良いと思います。

−やりたいことの究極とは具体的にどのようなものですか。
−例えば,人とのコミュニケーションを取るのが楽しいな,とか,とりまとめるのが楽しいな,人の話を聞くのが得意だな,などということです。自分の基本的なやりたいことは何かをよく考えることが,進路選択ややりたいと思う仕事を見つけるのに役立つと思います。
私自身の経験を振り返ってみて思うのは,やったことの全てが直接じゃなくても何かの形で次に繋がるので,やって無駄なことなどひとつもないということ。一歩進むとまた違ってものが見えてきてやるべきことも新たに出てくると思うので,まずはその場でできることを丁寧にやっていく,ということが大切になってくるのではないでしょうか。まずは何か1個目指してみると良いかもしれませんね。

−優子さん,今日は素敵な話をありがとうございました。