実験・実習図鑑~リケジョ's experiment 栄養編~

【導入】
理系といえば実験!実習!と思う方も多いのではないでしょうか。
理系は分野が幅広く、実験・実習は多種多様に分かれています。そんなリケジョの実験・実習事情をインタビューを通して紐解きます。第四章は栄養編です。


第四章 栄養編

【実習内容:大量調理】
・ではまず、情報の実験とはどんなことを行っているのか教えてください。
 大量調理実習では120食の昼食を作り、販売します。
今回の大量調理では主食や副菜、汁物などは統一されていますが、主菜は自分たちで考えています。主菜を2種類準備し、どちらにするかはお客様に選んでもらいます。そのため,どちらの主菜を選択しても一食に取るべき栄養素を満たすことができるように献立を作成しないといけません。
また、材料費も規定から外れないように気をつけています。食材の発注から自分たちでやらなくてはいけないので将来自分たちがやるであろうことを実際に体験でき、現場のリアルを知ることができるのでとても面白いです。
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・レポートの書き方でなにかこだわっている点や気をつけている点はありますか。
大量調理にはレポートというものはありません。しかし、大量調理前には作業工程表や作業指示書、重量の測定表、食材のg単価をのせる日計表などやらなくてはならないことはたくさんあります。
特に作業指示書とよばれる,いわゆるレシピが1番作成するのが大変です。誰がその料理を作ったとしても同じ料理ができるようにレシピを作らなくてはならないからです。
また大量調理後には反省会があります。お客様に提供した食事の温度や量を決められた時間ごとに測定し、適切だったのかグラフにして反省点・改善点について話し合います。大量調理は料理をするだけ、というわけではないところがとても面白いと思います。

・1番の実験の思い出は何ですか?
 授業が始まるとクラスで6つの班を作りました。そして調理がはじまると運営をする班とサポートの班に分かれて参加します。
私が先日参加した大量調理では私はサポート班で、運営班から渡された作業の工程表によると私はご飯担当でした。ご飯を炊く際にはご飯を洗ったり、付着水を計ったり、水を浸漬させたり…とお仕事があるのですが朝に他の班より早く来る運営班が水の浸漬まで終わらせてくれていて、私の仕事が炊飯のスイッチを押すだけだったのが思い出に残っています。
3時間近くある調理時間の中でご飯のスイッチ押すだけの仕事を任されたことが面白かったです。 結局は人員の不足しているところのサポートに回ったので3時間ずっと忙しかったですね。

・実験中での珍事件・大事件はありますか?
 先日の献立のデザートは芋ようかんでした。寒天を使っているのですが、固まりづらいのが難点でした。なので早く冷却まで済ませなくてはいけません。
まずはさつまいもを蒸して、牛乳と一緒にフードプロセッサーにかけます。この時にフードプロセッサーに材料を詰め込みすぎたらしく、牛乳が溢れてしまいました。牛乳が溢れてしまうと、計った牛乳量がわからなくなってしまいます。なので最初から牛乳を測りなおす必要が出てきます。でも、溢れるなんて想定外だったので注文した牛乳量では足りなくなってしまいました。
結果として、大学前のスーパーまで生徒が全力疾走をしてました。結局作り直して固まったのでなんとかなりましたが、ひやっとした事件でしたね。

・栄養系ならではの実験室あるあるを教えてください。
大量調理は6つの班に分かれて活動しています。その中で1回の大量調理に参加する班は3つの班です。
運営班(立場:管理栄養士)、サポートA班(立場:調理師)、サポートB班(立場:パートさん)の3つの班のみ調理室に入っています。残りはホールだったり、評価だったり、次回の準備だったりと調理室には入りません。そのため調理が終了した時の疲れ具合にすごい差が生まれていました。テンションが全然違くて、面白いです。結構あるあるだと思います。

・意外と知られていない実験室のお話はありますか?
大量調理はみなさんが思っているより普通の調理と差があると思います。なにより衛生面が徹底されているんです。
野菜でもゴボウのような土のついているものは切る部屋自体が変わって来ます。野菜は3回洗って、加熱しない生食のものは塩素で消毒もします。塩素消毒は嫌な人がいるかもしれないですが、食中毒を出さないためには大切な行程です。他にも食中毒が起こった場合に保健所に提出するための保存食を取らなくてはいけなかったり、廃棄率を計算しないといけなかったり…作業がとっても多いのです。
他にも加熱開始時間や中心温度も測定しています。ぜひ給食のおばさんには優しくしてあげてください。

・実験室の雰囲気はどんな感じですか?
 みんな調理が好きなので和気藹々と楽しんでいます。いざ大量調理が始まると時間に追われてしまうのでピリッとした雰囲気にはなりますが、結局はそれぞれ楽しんでいます。緊張感をもちながら楽しく調理しているので調理が好きな人には良い環境だと思います。終わった後にはみんなと疲れたけど楽しかったねと話をしています。

【最後に】
大量調理の裏側を知ることができたのではないでしょうか。次回は第五章薬学編になります。